超個人的・同人誌タイトルの付け方
こんにちは、同人戦士(文字書き)です。
今回記事を書くきっかけとなったのは自分のこのツイート。
私がタイトルひとつ、言葉一つ選ぶのにどれだけ資料探しまくってるか、一度見せたいくらいとっ散らかり方が凄い
— 慧@7/5まで原稿 (@kisaradukei) 2021年7月1日
これは私が再録集を出すにあたって呻きながらタイトルを決めたあと、無い頭を振り絞った達成感から自己満足のために呟いたものです。
そしたらそれをうっかり拾ってくれたフォロワーがおりましてな……
軽率に独り言を言うもんじゃねぇ……
ま、私にか文字選びの過程にかは知らんけど、興味を持ってくれたことはありがたい。
ということで今回作成した再録集のタイトル作成を例に取り、忘備録的に記録しておこうと思います!
タイトルを決めよう
まずは作業環境と私について
「まずは」とか言ったけど、ここは読みばして下さって全然結構なパートです。
飛ばす方は次の≪表紙の「顔」を決める≫からどうぞ。
出だしの挨拶に記述した通り、当方はプロでもなんでもなくただのしがない一般人の、趣味で同人屋さん(二次創作)をやっている者です。
なので世界観やキャラを一から作っているわけではなく、ベースにある程度作られている物を敷いたうえで、独自の解釈を組み込んで話を作成しております。
そのためすべての創作者が使えるようなタイトルの作り方ではないと思いますので、その辺りを頭の隅に置いて読んで下さい。
※当方は基本的に「本文を書く→タイトルを決めつつ表紙を作る」と言う感じの流れでタイトルを作成しています。
調べ物をする際、基本的にはパソコンしか使いません。
図書館に軽率に行ける感じならそれでもいいんですけど、基本的に仕事の合間に片付けているというか、仕事の暇つぶし的に作っているというか、サボっているというかとにかくそんな感じなのでネットからの情報のみです。
昨今のサイトの多くはスマホ用のページが用意されているとは思いますが、パソコンからしか確認してないので、もしリンク先のページがPC用のページしかなかったらごめんなさい。
表紙の「顔」を決める
ここからが本題です。
タイトルの決め方、っつってんのに「顔」を決めます。
顔。
いわばパッと目が引きつけられる部分。
人によってその中の、どのパーツに目が行くかは違うかもしれませんが、今回は大まかに表紙の「絵」という事で、写真を決めていきます。
これは私が物事を映像でとらえるタイプの人間という所為もあるのかもしれませんが、私は「タイトル買い」よりも「表紙(ジャケット)買い」の方が多いです。
タイトルはその本にとっての黒子とか、そばかす、メイクみたいな印象。
真っ白な紙にタイトルがどんっ!としてるのは『あの子は化粧映えするんだな』って思ってるし、逆に絵(写真)が全面で控えめな所にタイトルがいると『この子は個性的な顔立ち』って思ってます。
何言ってんだコイツ?って思われるでしょうが、書いてる私が一番何言ってるか分かりません。
とにかく表紙の話に戻りますね。
場合によっては絵を描いたり、友達に描いて貰ったりもしますが、私は写真の事が多いです。理由は
①自分の絵があまり好きじゃない(思い描くように描けない)
②描いて貰うのが悪い気がする(マイナーCPの民なので同族がなかなかいない……)
③(①にするにも②にするにも)時間がない
だいたいこの3パターンなので、「素材引っ張ってくる方が早ぇ!!!」となって写真を漁ります。
いつもお世話になっているのは「Unsplash」というサイト様。
こちら、もしかしたら見たことのある方もいるかもしれません。
ちょっとした話を書いてTwitterに投げるのにお世話になる「SS名刺メーカー」さんも利用しているサイトです。
今回の同人誌はTwitterやpixivに投げている8編の短編を纏めた再録集なので、まずは全体の話の中から立派な骨格になりそうな話を選びます。
これは話のテーマがバラバラで、一貫性のない時にだけやる作業になります。
もし「テーマに沿って書いた話を集めた本」やそもそもまとめ本ではなく収録内容が1本しかない場合はそのテーマに沿ってイメージを広げて行けばいいと思います。
今回骨格に選んだのは「怪我した寅と癒しの巳」(以降「寅巳」)と「四葩(よひら)」。
単純に「短編集の半分を占めている話」と「思い通りに書けてちょっとテンションが上がった話」として選びました。
※メインとなる話のタイトルをそのまま持って来るのもいいと思います。時間がない時などはよくやります。今回は「寅巳」のタイトルがずっと仮題にしていたくせにいいタイトルを思いつかなかったので、表紙に持ってくるにあたって新たに考える必要がありました。
「Unsplash」は英語仕様なので、検索も英語でやります。
前提として『寅巳』は森の奥深くにある大きな岩(磐座(いわくら))を神籬(ひもろぎ)としている干支十二支の巳の神様をメインにした話、『四葩』は紫陽花の話。
という事でまず「forest(森)」「rock(岩)」「dwelling place of a god(磐座)」
で検索。
ちなみに私は英語よわよわなので「DeepL翻訳」さんを利用しています。
「google翻訳」よりもナチュラルでより正確な翻訳がされるとTwitterで回ってきたので使うようになりました。
それでもイメージに合うものは見つけられず、ひとまず森は諦めて「hydrangea(紫陽花)」に切り替え。一度ばーーーーっと流して、結局上の方にあったこの写真が一番惹かれたので君に決めた!!
ひとまずこれで顔選びは完了です。
これでもう九割九分勝ったようなもんじゃ!
「顔」にあったイメージを固める
せっかくの素材(顔)を生かすも殺すもタイトル次第。
さて、大変な山場が来ましたよ。
今の状態では「寅巳」の要素が限りなくゼロに近い。
でもどうにか二つの話を二本柱に仕立て上げたい。
ここからようやく本腰を入れて調べ物をするターンです。
まずは紫陽花の花に関する事柄をもう一度さらい直し。「四葩」を書いている時にも散々調べていたはずなんですけど、書いた端から忘れていく人間なので、記憶力という物は皆無です。
新しいイメージが沸かないかという目論見に加えて、ここでは「四葩」のように紫陽花に別名がないか検索。
あまりピンとこなかったので今度はグーグル検索で「森 神域」と検索。
あわよくば表紙が差し替わる程のいい画像が見つかったりしないかな~と、決めたくせに迷いながら話を1本読む。
今度は「寅巳」に寄りすぎて表紙との整合性がつかない……。
でも、文中の「クム(籠む・隠む)」と言った表記から、唐突にひらめく。
よし、掛詞にしよう!
「四葩(よひら)」でも「四は『し』と読むことができ、『死』に転ずることが出来る」なんて書きましたから、言葉に二重の意味を持たせてもいいじゃない。
一気に足場が踏み固められるのが感じられます。
二重に読み取れるという事は、二つの話を一つのもので表せられるという事。
古典の授業ほぼ聞き流してたけど、こんな所で役に立つんですね。
(先生各位、学生時代は一部を除いて本当に真面目に受けなくてすいませんでした……!!!!)
決めた方向に沿って組んでみる
掛詞と言えば短歌・俳句。
短歌だとタイトルとしては長すぎるので俳句調がいいかな~と何となく枠を括ってみました。日本人なので五・七・五は耳に馴染むし、私はキャッチコピーみたいな、短くぎゅっと纏める作業は苦手なので、少しでも余裕を持たせて欲しい所。
まずは温故知新の精神で、偉大な古典から面白い発見は無いかと「紫陽花」をテーマにしたものを検索。
……紫陽花の歌少なすぎんか?
哀しくなったので仕方なく「掛詞とは」というページを探しました。
「四葩」がまさに梅雨時の話なので、「つゆ」に目をつけてキープ。
「つゆ(副詞)」が分からなかったので検索掛けたよ。(一番上に出てきているページの抜粋をさらっと流し見る程度)
もうひとつくらいワードが欲しかったので「しのぶ」をピックアップ。
こちらは当初「寅巳」の話の中に『シノブ(忍)』という名前の子が出てくることもあって、あわよくばトリプルミーミング出来たりしないかな~って考えていた時もありました。(無理でした)
ワードが二つに増えたので、ここで一度立ち止まってしっくりくる単語作り。
「しのぶれば」……「つゆきたり」……「つゆの訪れ」……
なんかまとまりが良さそうだったので「つゆの訪れ」に狙いを定め、「訪れ」の意味を改めてチェック。
使えそう!と判断したのでひとまず「つゆの訪れ」を五・七・五の最後の枠に。
意味としてはざっくりとこんな感じ
①梅雨が来た(「四葩」)
②ささやかな便りが届いた(「寅巳」)
「寅巳」は巳視点で進む話なので、話の展開的に後日談として『寅から便りが届いた』という事が表わせたら面白いな~と思い、ならば「四葩」は羽風から蓮巳に、それぞれ相手を思っている俳句になれば纏まりそうだという風に考えました。
蓮巳の二人称は「貴様」「お前」「(ごくまれに)君」。
羽風の二人称は「あんた」「○○くん(名前か苗字)」。
アイドルのわりに口悪いなこいつら……
おさまりのいい折衷案として「君」を選び、「君しのぶ」としました。
①君はなんて美しいんだろう(「四葩」)
②君は耐え忍んだ(「寅巳」)
……訳が大雑把なのは許せ。
とまあこんな感じで「君しのぶ」「○○○○○○○」「つゆの訪れ」
と前後が決まったので、最後に中を決めて行きます。
改めて訳を確認。
①君はなんて美しいんだろう→梅雨が来た(「四葩」)
②君は耐え忍んだ→ささやかな便りが届いた(「寅巳」)
……この二つを上手いことくっつけるのは至難の業ではなかろうかと、数分前の自分を恨む。
片方上手く行くと片方の整合がつかないこと、あるよね。
②の方が纏めやすそうなのでこちらを見て考えます。
話の流れとしては「散々我慢して来たけれど、父親と反りが合わずに家を飛び出してきた寅。なんやかんやあって父親の考えを理解し、家に戻ることになった」という話なので、『気持ちの絡まりが整頓された』感じにすれば良さそう。
短く言うなら「心」それから「解ける(解れる)」?
いい感じの言葉がないかチェック。
この「連想語・類語辞典」さんにはめちゃくちゃお世話になってます。愛。
「解ける」でも良いっちゃ良いんだけど、濁点は少ない方が柔らかく感じられるので一応調べてみる。
二重の表現が欲しかった私にとって、あまり宜しくなかったので「解ける」で確認。
……まあ、これでいいか(妥協)
そんなこんなで纏まったのがこれ。
「君しのぶ 心ほどける つゆの訪れ」
おん、なかなか良いんでない??(激甘判定)
意味としてはこんな感じ。
①一緒に居るうちに、なんだか打ち解けられてきた気がして、饒舌に喋る君を凄いなぁ、綺麗だなぁって思い始めてきた。そんな梅雨のある日。(「四葩」)
②(カオルの)長らく耐え忍んできた家族に対する心の強張りは、少しずつ解けて来ているらしい。そんな事を綴ったささやかな便りが届いた(「寅巳」)
だいぶ意訳しているけれど、おおむね二つの話をそれぞれ綺麗にまとめられたように思います。
完成!!
何度も言いますが同人屋なのでこの後で表紙を作りました。
表紙1だけをアップにするとこんな感じ
イメージにぴったりとくるフォントが平仮名しか対応していないので、表紙では全部平仮名にしました。柔らかく見えるし全然OK。
「からかぜ」フォント、めちゃくちゃお気に入りでしょっちゅう使わせて貰ってます。
まとめ
今回「大変だった~」とは言いつつそこまで右往左往していなかったのでこんな感じで収まってますが、タイトル決めるだけでわりと色んなサイトあちゃこちゃしてます。
その際、普段なら見る事の無いようなサイトを見つけて眺めていると、『色んな人がいるんだな』と思えるのと同時に『知らないことがいっぱいあるんだな』って気付けて、大変ですけど、面白いと思えるようになりました。
イメージにぴったりで、直感的にビビッとくるのもを探すのは、なかなか骨の折れる作業ですが、今回私が『掛詞』というアイディアを拾えたように、文面をそのまま捉えるのではなくて、自分の持ち得る知識を照らし合わせることで表現の幅はぐっと広がると思います。
この場合、必ずしも覚えている必要はありません。
先にも書きましたが私は記憶力が無いので、「単語は覚えてるけど意味はぼやっとしている」とかその逆もしかりで、ちゃんと記憶はしていません。(なのでちゃんと調べると全然違って使えなかったりもする……)
でも、ふとした折に『これが使えるんじゃないか?』と思って開けられる引き出しを持っています。この引き出しがあると話を書く時にも使えたりしてちょっとお得。
作り方はとっても簡単。
とにかくインプットをすること。
本(漫画)を読む、音楽を聞く、どこかに出かける、ニュースを見る、誰かと話す……何でもいいです。何でもいいので沢山の事に触れて、経験して、知ってみて下さい。
その経験が、知識が、必ずどこかで使える引き出しになります。
プロでもなんでもない人間の戯言なので聞き流してくれて構いませんが、もしたとえ二次創作であれ行き詰っている方がいらっしゃったら試してみて下さい。
インプットが十分にされればアウトプットも自然と出来るようになると思います!
それではみなさんも素敵な創作ライフを!
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